蠅の王 -Lord of the Flies-

ウェブと営業と三行日記。

2012年04月

ようやく2週間前にリリースされた噂のタダスマを確認できたので、問題点とかビジネス的に
どうかとか色々と考えてみたことを今更ながらブログにまとめてみる。


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第一印象としては、大学生向けに「データ通信料2980円以外は0円」を実現したのは面白い。
が、サービスサイトに必要と思われる情報が少な過ぎて、さらには重要説明事項と利用規約が
読ませる気がないだろう、と言いたくなるほど、読みにくい点に関しては、問題だと感じている。
月額2980円、学生向けデータ通信端末「タダスマ」発表



●説明不足と思われる内容

ザッと見ただけでもタダスマのサービスサイトには、「スマホではなくPocket WiFi」
「広告表示のされ方」「通話機能をSkypeで代用」「データ通信量の上限」
「契約解除料について」「個人情報の収集・活用内容」などは入れるべきだと思う。

利用者からすると、特に「通話機能をSkypeで代用」はちゃんと説明しておかないと、
後々トラブルになるのではないか。Skypeだと固定電話や携帯電話とは通話料金が別途掛かるし。
後は「3年縛りに満たないと契約解除料が掛かる」ということも。

また、タダスマというネーミングであるにも関わらず、実態は「スマホではなくPocket WiFi」と
いうのも、利用者に誤解を招く可能性が高いだろう。端末自体のスペックも低いので、
WiFiとしては兎も角、「ケータイ」や「情報端末」としてはかなり微妙なのではないか。
はたして、価格の安さだけで学生から受け入れられるかには、疑問が残るところではある。


●個人情報について問題と思われる点

タダスマは端末で広告表示するのだから、ユーザーのどの個人情報を活用してなのか、ちゃんと
説明し理解してもらわなければならない。申込時の登録情報で判別するつもりなのだろうか。
そういった点が、サービスサイトで全く説明されていない点は、ユーザーの理解を得る気が
ないと思われても仕方が無いだろう。
特に、利用規約 の「第5条 プライバシー」と「第20条 その他」には問題があると考える。

タダスマの利用規約で気になるところ1。
第5条 プライバシー「1 (略)利用者の個人情報が弊社と契約する加盟店・提携業者等に
対して提供されることについて利用者はあらかじめ同意するものとします。(略)」

→これは広告表示だけの話なのか、他の場合も想定しているのか、提供される個人情報の範囲は
 どこまでなのか、そういった点が明記されていない。


タダスマの利用規約で気になるところ2。
第20条 その他「1 当サイトでご注文した場合、利用者は株式会社オーシャナイズが
提供する他のサービスの会員になることを承諾するものと致します」

→どのサービスへの登録なのかの指定・説明がなく、サービス登録の同意取得になっていない。


●契約回線が一定数に達するごとに月額料金が少し安くなる方式

タダスマに関して1つ擁護しておくと、「契約回線が一定数に達するごとに月額料金が
少し安くなる方式」を「ねずみ講」と言っている人がいるが、そもそもこの方式ならば犯罪である
「ねずみ講」(無限連鎖講)とは全く形態が異なり、非常に失礼な話である。
考え方自体は、共同購入に近いのではないか。


●自社メディア専用端末という可能性

タダスマをビジネス視点で考えてみると、「端末販売」と「学生向けメディア」の2点あることが
興味深い。学生向けの広告や調査はどの企業も悩むニーズの高い部分であるし、しかも
携帯キャリアやGoogleやFacebookですらまだ実現できていない「広告・自社メディア入り端末」を
学生の手元に持たせることが出来る訳だから。

タダスマが「学生向けメディア」としてビジネス的に成り立つためには、10万回線くらいは
いるのだろうけど、メディア構築までの先行投資を「端末販売」という形で(たぶん)収益を
上げながらクリアしているのも、上手いと思う。
学生の同意と理解が前提とはなるが、化ける可能性はあるのではないか。


●まとめ

タダスマの所感としては、「データ通信料2980円以外は0円」というコンセプトは、
お金のない大学生向けにはメリットとなり良いと思うが、端末の特徴や注意事項など
重要な説明が省略され過ぎなのと、個人情報周りの説明・理解を得る努力が足りないところは
改善すべきだろう。今のところ、行動ターゲティング広告の会社でよくあるような企業側の
意図的な悪意は感じないので、きっちり改善すべきところは改善されることに期待したい。

「タダスマ」について色々考えてみると、上手くいくかは分からないし改善すべき点も多いと
思うが、スゴイ取り組みだと考える。と言うか、よく形にできたよね。ネット業界にいるから
こそ、端末のような「ハード」が入ることで跳ね上がる難易度とリスクがよく分かる。
粗も目立つがそれらを改善していけるのなら、オーシャナイズは今後も要注目ではないだろうか。
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TwitterでXenophiasさんと「ダウンロード刑罰化」について話をしていて、
”反対派というのは「目的は適当だが手段が不適切」あるいは「目的も手段も不適切」”
の2パターンあり、私がその2つを混同しているという指摘を受けた。

そこで、改めてそもそもの「背景」「目的」「手段」を整理した上で、「ダウンロード刑罰化」の
論点の変遷を考えていたら、何で自分が混同していたのか理解できたので、下記にまとめてみる。

結論を述べると、当初の「目的」自体が不適切だったが、既成事実化されてしまったために、
論点が「手段」、「手段」から「刑罰化」そのものへと変わってしまった、ということかな。
だから、当初の目的自体が不適切という話と、現実問題としての論点である「手段」の話を
ごっちゃにしてしまっていた。


そもそもの「背景」「目的」「手段」のザックリまとめ

背景:ダウンロードによる著作権侵害により、権利者は甚大な不利益を被っている
目的:直権侵害のダウンロードを防ぐことにより、権利者の不利益にならないようにする
手段:著作権侵害のダウンロードを違法化・刑罰化にすることにより、ダウンロードを防ぐ


不適切な目的の既成事実化

で、私に関しては、そもそも「目的」の前提となる「背景」が間違っているので、
後者の「目的も手段も不適切」という考えである。ただ、2009年の違法化のタイミングで、
その不適切な「目的」が既成事実化してしまったために、
反対派にとっては、既に「目的」を争う段階では無くなってしまったので、「目的」が不適切と
考えつつも、実質的に「手段」で争わざるを得なくなった、というのが現状という認識かな。


不適切な手段検討の既成事実化

そこで、より有効な「手段」があるのではないか、という指摘があるのだが、
それは不特定多数のダウンローダーを取り締まるより、不特定少数のアップローダーを取り締まる
方が効率的、というもの。ただ、これも「ダウンロード刑罰化」で話が進んでいるために、
実質的に論点が「刑罰化」そのものになってしまっている気がしている。
(アップローダーの取り締まりなら、現行法で対応可能)


現状での「ダウンロード刑罰化」の論点

そして、「刑罰化」自体のツッコミどころとして、主なものは、
「著作権法第30条の私的使用の範囲なので慎重に検討するべき」
「ユーザー側が違法なコンテンツか判断できない」
「取り締まる側が外からは違法なコンテンツか判断できない」
「全員を取り締まるのは現実的には不可能(見せしめで取り締まるだけなのは健全と言えるのか)」
あたりかな。抜けがあるかもしれないけど。

という訳で、反対派からすると、そもそもの「目的」や「手段」がまともに検討されずに、
どんどん既成事実化されていって、話が進んでしまっていて、
論点が変わってきているというのが今の状況と言えると思う。


今後予測される展開

そして、今の「ダウンロード刑罰化」の先にあるのが、悪名高い「スリーストライク法」で、
ここまで来ると、ドイツや韓国での悪例のように、一般ユーザーを巻き込んだ混乱が生まれる
可能性が高く、しかも、権利者の利益には何の効果もないという状態が容易に予測される訳で。

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