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ヒトラーにより西ヨーロッパが崩壊しかけ、派遣した英陸軍はダンケルクに追い詰められて全滅寸前で、英国自体も存亡の危機という、暗黒の27日間。 
この映画は、チャーチルが首相に就任して最初の困難な意思決定を描いた作品と言える。 

アカデミー主演男優賞を獲得した、ゲイリー・オールドマンの演技が最高オブ最高。 
秘書曰く「短気で、激情型で、腹立たしくて、恐ろしいが、笑いを誘う」チャーチルの超曲者な人物像と、国難を前にしての揺れ動く繊細な心の揺れ動きを見事に演じ切っている。 
先月観てインパクトか強かった、「バーフバリ」で神話的英雄たる真の王を圧倒的に演じたプラバースとは別の意味で、チャーチル首相と意思決定の困難さを演じ切ったゲイリー・オールドマンは圧倒的だった。有名な演説シーンとその際の有名なフレーズは、圧巻である。 

周辺の役者も素晴らしかった。 
気丈に檄を飛ばしながらもチャーチルを支える、妻クレメンティーンを演じたクリスティン・スコット・トーマス。 
ある重要な役割として意思決定を行った、国王ジョージ6世を演じたベン・メンデルソーン。 
憔悴仕切って英国の苦境を体現したような、ネヴィル・チェンバレン前首相を演じたロバート・ピックアップ。 

チャーチルは、自身を長年支え続けた妻クレメンティーンに関して、こう語っている。
「私の業績の中で最も輝かしいことは、妻を説得して私との結婚に同意させたことである。」 
この言葉自体は未登場だが、これが全く正しいことは、映画で描かれている。 

印象に残ったのは、 450人の議員がひしめき合う国会議事堂と地下壕の戦時作戦室の狭さ。 
心情を示すような、空から俯瞰するカメラワークと空を見上げるカメラワーク。 
チャーチルでありゲイリー・オールドマンとしか言いようがない見事な特殊メイク(担当した辻一弘氏は特殊メイクでアカデミー賞受賞)。 

一つ難点を挙げるとすれば、他にも批判している方は多いが、やはり日本版タイトルの副題だろう。 原題は「DARKEST HOUR」で、英国が戦中で最も暗闇に包まれていた時期の意味。副題付けるなら、原題と作品テーマを生かせよな、と心底思う。 

さて、この映画を楽しむには、第二次世界大戦における1940年5月時点でのイギリスの状況をザックリ理解しておくのが良いだろう。歴史好きや演劇好きな人は、特に楽しめるに違いない。 だが、最も響くのは、先の見えない困難な状況の中でのトップの意思決定の難しさ、を分かっている人だと思う。 

なお、この映画で重要なキーとなっている「ダイナモ作戦」(ダンケルクの戦い)は、昨年観損ねた映画「ダンケルク」(クリストファー・ノーラン監督)で描かれているので、早速明日レンタルして観ようと思う。