蠅の王 -Lord of the Flies-

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カテゴリ: 時事問題について

12/16に最高裁で選択的夫婦別姓絡みの判決文が出たこともあり、
選択的夫婦別姓(厳密には夫婦別氏)の議論を理解しようと、色々調べながら、12/17〜20の4日間に渡って連続ツイートしていたら、40ツイート×140文字で合計約5,600文字にもなっていたので、ここは一つ、ブログにまとめて選択的夫婦別姓の議論を整理してみることにした。

選択的夫婦別姓の議論は、下記の通り、4つの論点にまとめることができる。要は、前提の確認・現状把握・過去の歴史・導入検討、の4つ。
長いので、下記の通り4つに分けて、4部構成でブログを書いてみることにする(って論文かよ)。

1.大前提である「個人の尊重」の根拠、日本国憲法の根底

2.統計・調査での社会情勢の変化と国民ニーズの実態把握

3.家族制度を定める日本の民法の源流、1898年の明治民法の目的と制定経緯

4.実際に導入する場合の民法・戸籍法の影響範囲


まずは1つ目。憲法は素人だが、がんばってみた。

1.大前提である「個人の尊重」の根拠、日本国憲法の根底

⚫️単なる個人の考え方の違いではない選択的夫婦別姓の議論
大前提として、選択的夫婦別姓の議論を、所詮は個人の考え方の違いに過ぎず、優先順位の低い大したことない話と軽視する人もいるが、実はそうではない。
日本のあり方そのものの話に繋がる非常に重要で深刻な議論なのである。

では、選択的夫婦別姓の議論の大元となることは何か。
よく出てくる話は、家族制度についてのあるべき姿、だったり、家制度的なものに対する考え方、だったりする。
だが、議論の大元はどちらでもない。それは、
「個人の尊重を基本的に優先する」考え方か、
「他人(個人)よりも自身の正しさ=国家のあるべき姿として優先させる」考え方か、
の違いである。これは単なる個人の考え方の違い、単なる対立軸ではない。

即ち、
日本国憲法の掲げる「個人の尊重」の考え方か、
日本国憲法の根底を否定する「他人(個人)よりも自身の正しさ=国家のあるべき姿として優先させる」考え方か、
という深刻な対立なのである。

つまり、日本国憲法の根底にある「個人の尊重」の考え方を肯定するのか否定するのか。というのが、選択的夫婦別姓の議論における根幹であり、非常に重要で深刻な議論である理由である。


⚫️選択的夫婦別姓の議論の大前提の結論
よって、日本国憲法を肯定し、日本国憲法が定める国のあるべき姿を前提とするならば、選択的夫婦別姓の議論の大前提となる「個人の尊重を基本的に優先する」考え方は自明なのである。
ここに議論の余地は無い。
もちろん、「個人の尊重」の方向性=選択的夫婦別姓の絶対導入、ではなく、社会情勢の変化や国民ニーズの実態を踏まえた上で、さらには民法・戸籍法への影響範囲を検証した上で、導入するかどうかを前向きに検討すべし、との当たり前の話ではあるが。


以下は補足。

⚫️日本国憲法の根底である「個人の尊重」という考え方
では、「個人の尊重」の考え方とは、一体何を根拠とするのか。
日本国憲法の根底にあるのは、「個人の尊厳(尊重)」の原理であり、全ての個人が尊重されるための政治体制が、憲法の定める国のあるべき姿であり、憲法の三大原理(国民主権、基本的人権の尊重、平和主義)によって構成されるものと言える。
この「個人の尊重」という考え方は、日本の法律における基本原理であり、民法など数十もの法律においても目的規定として言及する条文がある。

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日本国憲法では、第13条、第14条1項、第24条で「個人の尊重」について明確に規定されている。

日本国憲法第13条(個人の尊重)
「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」

※ 大日本帝国憲法には、本条に相当する人権(臣民の権利)に関する包括的な規定は無い。

日本国憲法第14条1項(平等権)
「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」


日本国憲法第24条(家庭での個人の尊厳と男女平等)
1項
「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」

2項
「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」

※ 大日本帝国憲法には、本条に相当する家庭での個人の尊厳と男女平等についての規定は無い。


補足であるが、選択的夫婦別姓の議論でよく出てくる家制度や非平等的な伝統的家族制度の考え方は、
憲法第24条において、明治民法における家制度や家父長制は明確に否定されており、家族関係形成の自由・男女平等の理念が、日本国憲法における家族モデルの基本であると規定されている。


⚫️日本国憲法における個人の制約原理「公共の福祉」の考え方
「個人の尊重」に関連して、キーとなるが、個人の制約原理である「公共の福祉」である。
「公共の福祉」は、現行憲法で、公共の福祉に反する場合、国民の基本的人権(言論・結社・身体の自由等)を制限できるので、極めて重要である。

憲法における「公共の福祉」の解釈は、色々な学説があるのだが、よく勘違いされるように、「個人の尊重」よりも優先されるべき概念ではなく、「個人の尊重」との対立概念でもなく、全体の利益が個人の権利・利益より優先されることを意味する訳ではない

「公共の福祉」とは、
「各個人の基本的人権の共存を維持するという観点での公平」であり、「国民の健康・安全に対する弊害を除去を目的とする制約」を意味し、
または「他人の権利を害さないことと、基本的憲法秩序を害さないことを目的とする制約」であり、
「公共の福祉」の考え方の根底には、あくまでも「個人の尊重」があるのである


⚫️日本国憲法の根底である「個人の尊重」の否定が意味すること
個人の尊重よりも、「他人(個人)よりも自身の正しさ=国家のあるべき姿として優先させる」考え方は、上述したとおり、日本国憲法の基本原理である「個人の尊重」の否定と言える。

「他人(個人)よりも自身の考える正しさを優先」という考え方は、「ある考えが絶対的に正しいとして他人に強要する」考え方であり、他人に対しても自身の正しさを強要するためには国家権力を使うことが当たり前とする考え方と言える。
つまり、この考え方は、自身の正しさ=国家のあるべき姿、として同一視しているのである。
自身の考える正しさのためには、個人の尊重や平等権を国家権力によって制約してもよいとする考えなのである。

ここでいう自身の正しさとは、それが明確な概念であるのか、あやふやなものか、単なる不安感なのか、などは関係がない。

この考え方の表れの典型が、夫婦別姓反対や事実婚・婚外子差別などであり、他にも家族観・結婚観・歴史観・国家観・憲法観など、あらゆる分野に適用される。

自民党の中でも強硬な夫婦別姓反対派は、日本国憲法の掲げる個人の尊重の考え方ではなく、「他人(個人)よりも自身の正しさ=国家のあるべき姿として優先させる」考え方であると思われる。
そりゃあ(9条以外の)憲法を根本的に改正したがる訳である。なぜなら、個人の尊重という日本国憲法の根底、ひいては現代日本のあるべき姿を否定したいのだから。当然の話であろう。


⚫️日本国憲法の定める「個人の尊重」ははたして日本に浸透しているのか
「個人の尊重」を基本原理とする日本国憲法が1947年に制定されて、今年で68年目であるが、未だ日本には「個人の尊重」という自明の考え方が浸透していないのではないか、という印象がある。

夫婦別姓の議論を眺めていると、夫婦は同性であるべき(これ自体には問題はない)という自身の考えを他人にも強要することに何の疑問を抱いていない人が、結構多いように思える。
これはつまり、「個人の尊重」の考え方が浸透していない表れではないか。この傾向は夫婦別姓の話に限らないと思われる。
要は、日本国憲法が定める国のあるべき姿を国民が未だにあまり理解していないのでは、という疑念だ。


(余談)選択的夫婦別姓の議論で最初に確認すべきこと
選択的夫婦別姓の反対派の前提が、個人の尊重・男女平等の原則ではなく、「他人(個人)よりも自身の考える正しさを優先」する=個人より国家を優先する考え方(国家が国民を統制する的な考え方)とするならば、
日本国憲法を基本とし、個人の尊重・男女平等の原則をあるべき姿とする人たちとは、絶対に話は噛み合わない。
前提が違い過ぎるから議論するだけ無駄だと思う。議論の際は、まずこの確認が必須だろう。
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現在進行形で炎上しているF-Secure社の該当社員の件について、
F-Secure社はどう対応すべきであるのかをまとめてみる。
炎上へのリンクはあえて貼らない。

例の件でF-Secure社がやるべき基本はこの3つ。
1.迅速な広報対応。
→最低でも半日以内に一報を出し、そこから24時間以内に調査結果と今後などの情報を出す。

2.営業対応。
→その情報を元に主要取引先への直の説明+個別電話・メール。

3.他の社員の保護。
→ネット上の会社との繋がりを公私ともに一旦消し社員を守る。


⚫️やるべき3つのこと
1.迅速な広報対応
F-Secure社は完全に初動対応をミスったと言える。
24時間以内にはリリースとして公表すべきだった下記のような広報対応の基本が全くなされていないからだ。
特に、当該社員がどのようにリストを作成したのか、その過程に会社でしか得られない機密情報が含まれていたのかどうか、といった点をきっちり調査し、時系列に記載することができていない点は致命的な失敗と言える。
何故なら、最も気になる事実を提示しないことにより、憶測が憶測を呼んで収拾がつかなくなるからだ。炎上が悪化する典型的パターンと言える。

また、下記内容のリリースは、サイトのファーストビューにリンクを貼ることが重要だ。これは炎上へのカウンターであると同時に、会社としての誠意を見せるためでもある。

1.現状把握(当該社員のリスト化方法、経緯、影響範囲)
2.原因
3.責任の所在
4.応急の対応策(該当社員への処遇含む)と追加リスクの有無
5.企業の方針(謝罪・コメント)
6.今後の方針・再発防止策(社員教育など)


2.営業対応
社員の不祥事の際には、初動で上記内容をまとめて社内共有しておかないと、営業も取引先に説明できない。
広報対応の基本6項目は、営業対応においても基本となる。
だから、この基本がなされていないF-Secure社は、多分営業対応でも上手くやれてないと思われる。

本来であれば、広報対応と同じ内容の経緯報告の文書を作成し、重要な取引先には責任者と一緒に訪問して、きっちり説明する。
この時に、営業担当者だけで行ってはならない。
責任者が同行することで会社の誠意と対応の良さを取引先に示すことになり、さらには先方の責任者も同席する確率が上がるので、担当者の上長同士で直接疑問や不安を解消できるのが大きいからだ。

また、取引先が多くて直接訪問しきれない場合は、個別メール・電話または一斉メールで対応する。この際には、広報対応のリリースページへのリンクが必須だ。


3.他の社員の保護
例の件でF-Secure社の広報対応のミスを見る限り、該当社員を除く、他の社員の保護にまでは頭が回っていない可能性が高い。
この件のように、該当社員が会社の立場を利用したと疑われている場合は、他の社員も仲間扱いされ晒しや攻撃の対象にされる可能性が高いので、無関係な他の社員をソーシャルリンチから防衛する義務が会社にはあると思う。

具体的には、一般社員に関しては、一旦公私ともにネット上の会社との繋がりを消して防衛しておくべきだ。
特に今回の件の場合、下手するとソーシャルリンチ用として他の社員の個人情報リストが作成・公開される恐れもある。
公の方はコーポレートサイトの社員紹介などで、私の方はFacebookやTwitterなどでの会社表記などのことを指す。


⚫️リアルタイムに炎上の動向を把握し対策を立てる
F-Secure社の件のような炎上事件が発生した場合、広報対応が上手くいっているかを確認するには、炎上の動向をリアルタイムかつ時系列に把握していくことが重要だ。
これは、TOPSYとTwitterのリアルタイム検索で確認できる。
TOPSYは半日単位でのツイート数と言及の多いツイートが分かるので、炎上度合いと、時系列の炎上度合いの変化(特に新たにニュースサイトへの掲載・新たな燃料投下の把握)と、炎上元の主な記事を把握できる。

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ニュースサイトに掲載された場合は、先に公表していた上記広報対応の基本6事項を踏まえたものになっているかを確認する。
新たな燃料投下を確認した場合には、その燃料を分析した上で適切な対応を取る。
また、リアルタイム検索で目視でのコメントの傾向を確認することも重要だ。コメントでの反応で、広報対応で必要な情報が提示することができていたかどうかがすぐに分かる。
もし、同じ疑問を呈する人が多くいれば、その疑問に対する答えを早急に追加する。



(参考:一般的な炎上ルート)
2ch内で燃やす対象の粗探しをして本人特定と証拠固めを行う
→それを煽り系2chまとめサイトが記事化
→その記事を起点にTwitter上で拡散
→IT系ニュースサイトで記事化
→色々なTwitterやブログで言及し出す
→一般ニュースサイトで記事化
→ヤフトピ砲炸裂

広報対応の初動が上手くいって、新たな燃料投下が無ければ、ITニュースサイトで記事化されるタイミングで必要な情報提示はされているので、記事化が鎮静化の役割も果たす。
煽り系2chまとめサイトだけでの炎上なら、リアルへの影響はあまり無いと考えてよい。

だが、初動をミスってITニュースサイトでの掲載時点で必要な情報が提示されていないと、今度はITニュースサイトの記事を起点にさらに炎上が広がることになる。
その場合、一般ニュースサイトやヤフトピへの掲載一直線で、炎上度合いがもう一段階上がる可能性が出てくる上に、取引先の担当者やその上長が記事を目にする確率が跳ね上がるので、営業対応に支障が出る可能性が高くなってくる。

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最近、国際政治への関心が強くなっていて、色々記事を読み漁っているのだが。
アラブ研究者の池内恵氏による『ロシアの軍事介入による「シリアをめぐる闘争」の激化』の分析まとめを読んで、素人でも分かりやすく簡潔だったので、混迷のシリア情勢とシリアを舞台とした国際政治闘争の現状を少しでも理解するために、自分なりに整理・要約してみた。

【寄稿】『中東協力センターニュース』に四半期に一度の中東分析まとめを


⚫️シリアとは
シリア・アラブ共和国は、中東と西アジアの共和制国家で、現政権は、シーア派に近しいアラウィー派のアサド大統領である。
人口は2,200万人。人種的にはアラブ人が9割で、他にクルド人やトルコ人、アルメニア人、ギリシア人などがいる。北西部のアレッポは人種のるつぼで、南部の首都ダマスカスはスンニ派アラブ人がほとんど。
宗教は、スンニ派が7割であり、政権を担うアラウィー派は少数派である。
国際関係は、トルコ・イスラエル・レバノンとは領土問題も抱え敵対的、スンニ派のサウジアラビアなどの湾岸産油国とも敵対的、ロシアとシーア派国家のイランは友好的、米国からはテロ国家認定を受けており経済制裁中で在シリア大使も帰国させている。
日本とは、国家間の関係が薄く、元々イスラム社会とも縁が強くないこともあり、中東の中でも認知度は低い。

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⚫️中東におけるシリアの地政学的意味
シリアは経済や資源は中東でもさほど大きくないが、北西部が地中海に面していて中東の地域大国諸国の真ん中にあって地政学的に重要な位置にあるため、中東の地域大国(イラン・トルコ・サウジなど)や域外の超大国(米国とロシア)の利益がせめぎ合う国際政治闘争の場と化している。


⚫️シリア騒乱の始まり
シリア騒乱は、アサド政権の圧制や弾圧に対する2011年1月26日の小規模な抗議行動に端を発している。
抗議行動に対し、シリア当局が強権を発動し多数を逮捕したため、抗議行動が激化。全国的にデモが広がり、その後治安部隊とデモ参加者の間で衝突が頻繁に発生し、シリア国民は暴力をもって弾圧され続けた。
2011年中に国連やアラブ連盟による調停が入るも上手くいかず、その後もアサド政権の弾圧と反体制派との衝突はエスカレートし続け、国内と周辺国から武装勢力が色々できたり入ってきたりして全国的な騒乱に発展し現在に至る。
騒乱では、国民2,200万人のうち、25万人が死亡、400万人以上が国外難民化、700万人以上が国内難民化、と国民の半数以上が家を失い難民化している。


⚫️シリア国内の各勢力の状況
シリア国内の状況は、アサド政権が国民への弾圧や虐殺によって国家としての正当性を大きく失っており、元々国家としてのアイデンティティが弱かったこともあって、国家が曖昧になってきているのが実情。
国外難民の多くは、アサド政権の弾圧が原因と言われている。
そこに複数の反体制派の武装勢力(自由シリア軍・アル=ヌスラ戦線・征服軍など)が複数混在し、さらには国家横断的な過激派武装勢力ISIL(イスラム国)と、北部のクルド人勢力が加わって全国的に戦闘を繰り広げており、四つ巴どころではなく混沌と化している。
アサド政権と主に戦っているのは、反体制派の諸武装勢力であり、ISILとはあまり戦闘になっていない。
シリア東部と中部のほぼ全域をISILが支配している状況で、アサド政権は北西部を除く西側1/3ほどで、反体制派は内陸の北西部の一部、クルド人勢力は北部に勢力を張っている。

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橙:アサド政権
黒:ISIL(イスラム国)
緑:自由シリア軍(FSA)
黄:クルド人勢力


⚫️シリアへ介入する外部勢力
シリアへ介入している外部勢力は、主な国で、アサド政権にロシアとイラン、反体制派の自由シリア軍に米国とヨルダン、同じく反体制派の征服軍にサウジなどの湾岸産油国、ISILは全方位的に敵対的、さらにトルコはアサド政権と北部のクルド人勢力に敵対的、米国とロシアの対立、イラン(シーア派)とサウジなどスンニ派諸国とが対立関係にあり、シリアを舞台に中東の地域大国と域外の超大国が国際政治闘争を繰り広げている。

シリアでの戦闘の状況は、アサド政権と対峙しているのは、主に反体制派の自由シリア軍などで、ISIL(イスラム国)は直接戦闘はあまりしていない。
なので、アサド政権を支援するロシアは、必然的にISILより反体制派の掃討を優先。それにより弱体化した反体制派がISILへ合流する可能性も指摘されている。


⚫️ロシアのシリア軍事介入の目的
ロシアのシリア軍事介入の目的は、主に中東と地中海でのロシアの軍事プレゼンスの向上とされている。シリアを舞台に、米国主導の国際秩序に対してのロシアの挑戦、かつての超大国としての名乗り、の意味もあるとの指摘もある。
具体的には、シリア北西部で地中海に面する都市ラタキアを抑えることでシリアおよび地中海での橋頭堡とし、アサド政権を支援することでシリアへの影響力を確保する狙いがあると思われる。
現時点で、米国・トルコ・サウジなどのスンニ派諸国が求めるアサド退陣には反対しているが、騒乱を終結させての後継政権にロシアの影響力を確保できれば、アサド政権には拘らないとの見方もある。


⚫️米国のシリアに対する立場
シリアに対する米国の立場は主に3つ。

1.中東におけるロシアの台頭と米国の衰退への対応のため、明確な軍事的対峙を求める立場。ジョン・マケインなどの共和党保守派やヒラリー・クリントンなどの民主党リベラル・タカ派がこの立場。
2.ロシアに協調してアサド政権を支援し、ISIL打倒を優先する立場。
3.ロシアを生暖かく見守って静観する立場。オバマ政権がこの立場。。

このうち、2のロシアに協調してアサド政権を支援する方針は、アサド政権に敵対的なトルコ・サウジなどのスンニ派諸国の離反を招きかねないので、米国が選択することは考えにくい。
現状では、オバマ政権は3の静観する立場だが、1の強硬路線の考えも強くなってきているため、今後強硬路線に転じる可能性もある。
キーとなるのは、ロシアの軍事プレゼンス拡大が軍事的・経済的に持続できるかどうかで、もし持続できるのであれば、ロシアの中東での影響力は大きく増し、反対に米国の威信は大きく低下するため、米国はロシアと協調するか軍事的に対峙するかの二択を迫られることになる。
また、来年の次期大統領は、今のところ民主党のヒラリー・クリントンが有力なこともあり、シリアを舞台に米国がロシアと軍事的に対峙する方向になる可能性はそれなりにあると考えられる。


⚫️今後どうやって騒乱を終結させるのか
致命的なのはアサド政権に代わる政治的な勢力が見当たらないことで、割と詰んでいる状況。
基本的には、地上軍を投入してISILを打倒し、アサド政権と反体制派で話の分かる勢力をまとめて和解させ、後継政権の目処が付いたところで、アサドに穏便に退場してもらう形、とされる。
地上軍の投入は、米国はアフガニスタンでの失敗を踏まえて投入には及び腰で、ロシアが投入するかどうかが取り沙汰されている。
もっとも、ロシアが地上軍を投入した場合でも、ISILやその他の武装勢力は非常に手強く、かつてのチェチェンやアフガニスタンのように泥沼にハマる可能性も高いと見られている。
その場合、ロシアへの憎悪が募ってチェチェン側に飛び火することもあり得る。

と言うか、シリア騒乱は終結できるのだろうか。各勢力が殺し合いに疲れるまで何年も続きそうな気も。。。
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LINEカンファレンス東京2014

LINEカンファレンス2014。今回の発表のコンセプトは、

「LIFEプラットフォーム」
    と
「エンターテインメント・プラットフォーム」

という訳で、発表内容のまとめと言うよりは、私自身の見立てと今後の展開を考えてみる。って、色々考えていたら、モリモリ考えが連想されてしまって、結構長くなってしまった。

(目次)
1.LIFEプラットフォーム
 「LINE TAXI」(タクシー配車サービス)
 「LINE WOW」(フードデリバリーサービス)
 「LINE Pay」(決済サービス)
 「LINE Maps for Indoor」(商業施設ナビゲーションサービス)
 「LINE@ ID」(仕事用LINEアカウント)
2.エンターテインメント・プラットフォーム
 「LINE GAME」のラインナップ拡大
  新会社「LINE MUSIC」を設立
 「LINE公式ブログ」
 「LINE有料公式アカウント」
3.ビジネス・プラットフォーム(私の造語)
 『LINEビジネスコネクト」


1.LIFEプラットフォーム
狙いは、「ネットのみ」から「リアル=日常生活」へ。
コンセプトは、オンデマンドEC、即ち「リアルタイム×EC」。
「リアルタイム×EC」のサービスとしての第一弾は下記の2つ。

「LINE TAXI」(タクシー配車サービス)
 →パートナー:日本交通(タクシー保有数22,000車)
  最近日本でもネット上で認知が進んできたスタートアップ「Uber」のガチ競合。
  今冬予定の東京限定版先行リリース時には、3,300車が配車対応とのこと。
  世界中のタクシー会社と提携することで、世界進出も視野に。

「LINE WOW」(フードデリバリーサービス)
 →パートナー:Woowa Brothers Corp.(韓国最大のフードデリバリーアプリ)
  今秋東京渋谷区限定でソフトローンチ。
  今後は、対象のメニュー・店舗・エリア・配達時間などを順次拡大していくが、
  配達網を構築した後は、デリバリー以外にもサービスを拡大していく予定。
  サービス名が「LINE デリバリー」ではないのは、今後の拡大を見据えての様子。


相変わらず目の付け所が上手いが、上記2つの「リアルタイム×EC」サービスを含むサービス群の横串として投入されるサービスが、下記「決済サービス」。

「LINE Pay」(決済サービス)
 →クレジットカード連携での決済+事前にお金をチャージするプリペイド方式。
  機能は下記の4つ。
  1.決済:LINEのサービス、提携店舗・サービスでの決済ができる。
  2.入金:コンビニ、提携銀行(みずほ・三井)で入金が可能。
  3.送金:銀行口座を知らなくても、相手のLINE Pay口座に送金できる。
  4.割り勘:サービスの購入費用を人数分で分ける機能。

機能としては、「PayPal」や「au WALLET」などに一部近いと思うが、使えるサービス群を自ら作っていくところが、決済系企業とはひと味違うところと言える。
この決済サービス「LINE Pay」を横串にして、「リアルタイム×EC」サービスを拡大していくのが、LINE社の狙いだろう。

最初から「割り勘」機能を用意していることから、「LINE MALL」での決済も当然踏まえており、「LINE MALL」上での売上金とLINE Pay口座の統合、または容易に充当できる機能が、近いうちに対応されると思われる。

気になる点としては、スタンプやゲームやマンガにて使われている「LINEコイン」との関係だが、「LINE Pay」がポイントサービスも想定しているとの話から、「LINE Payポイントの交換先としてのLINEコイン」という形にするのではないか。勿論、「LINE Pay」での決済で「LINEコイン」を購入できるだろう。
これにより、LINEのコンテンツ系サービスとの連携を、より密にすることができる訳だ。

「LINE Pay 」 ー「リアルタイム×EC」
      ↓ ↑
「LINEコイン」ー「コンテンツ」
 

※ コンテンツ=スタンプ・ゲーム・マンガなど

さて、「LINE Pay 」が決済サービスとして上手くいくかは、「リアルタイム×EC」と「コンテンツ」のサービス拡大、および提携店舗・サービスの拡大に掛かっている訳だが、私は浸透する可能性が高いと睨んでいる。少なくとも日本では。
決済サービスを投入・投入予定の企業として、誰しも思いつくGoogle・Apple・Amazonといった超ビッグプレイヤーや、国内の携帯キャリアがいる中で、何故そう思うのか。

それは、LINE社が「EC」と「コンテンツ」という「決済の使い道」に最も先進的に取り組んでいるからだ。
これは、楽天市場と楽天スーパーポイントの関係に近く、提携先に依存せず、「決済の使い道」を有力な自社サービス内でコントロールできるのが強みに繋がるから、と考えている。
自社サービス=「リアルタイム×EC」「コンテンツ」の拡大が、「LINE Pay」の拡大に直結するのが、大きな追い風となる。
同じように取り組めている企業は、テンセントなど中国ネット大手を除くと、おそらく無いだろう。


その他、新たに提供されるサービスは、下記の2つとなる。相変わらず目の付け所が上手い。

「LINE Maps for Indoor」
 →パートナー:百貨店やショッピングモールなどの各社
  商業施設内のナビゲーションサービス。
  百貨店やショッピングモール内での最適な道順を提示してくれる。
  当然、店舗情報を確認することも可能。

「LINE@ ID」
 →プライベートのLINE IDに対するパブリックのID。
  プライベートとは完全に切り離され、仕事用の個人向けIDと言える。


この2つのサービスは、「リアル店舗=LINE@」との連携を想定されたものだろう。

「LINE Maps for Indoor」では店舗情報を確認することができる。
そして、自社の地図サービスなので、各店舗の「LINE@アカウント」を掲載したり、店舗情報を確認したユーザーに対し、クーポン情報を出すことも可能となるのではないか。
お店の近くに来た時に、クーポンを出したい/見たい(但し出されまくるのは嫌)、という店舗とユーザーの両方のニーズを見事に解決したサービスになる可能性が高い。
何しろ、ユーザー自身がアプリを立ち上げ、自ら気になった店舗情報を確認してくれるのだから。現地でのリアルタイムな検索行動を大きく喰う可能性を秘めている。

また、「LINE@アカウント」が店舗単位なのに対し、「LINE@ ID」は社員単位(複数人での1アカウント利用も可能)。
日本人のビジネスユーザーだと、マネージャークラス以上の人以外は、割と公私が混ざるFacebookに悩む人が多いので、そこを突いていると言える。
企業や店舗、社員とユーザーをより近付ける取り組みであると共に、ビジネス的な使い方、即ちメールの代替としての使い方として浸透する可能性を秘めている。
但し、こちらは、利用ユーザーが増えてなんぼの話なので、浸透するのにも時間は掛かるし、浸透させる労力も大変なものとなるだろう。
よって、おそらく「LINE@ ID」を浸透させるために、今後何かしらのもう一手は打つと予測している。



2.エンターテインメント・プラットフォーム
狙いは、「コミュニケーションのネタとなるコンテンツの拡大」へ。

「LINE GAME」では、ラインナップの拡大に専念し、提携やゲーム開発専業新会社の設立で、ゲームコンテンツ力の強化に努める方向性か。

また、当初企画していたLINE Musicは、ユーザーの音楽体験を変えるまでには至らないとの判断で打ち切り。
新たな取り組みとして、新会社「LINE MUSIC」を設立し、定額音楽サービスを年内リリース予定。
詳細は後日。パートナーは、avexとSonyMusic! Sonyを抑えてきた。
相変わらずアライアンスが上手いと言うか強い。

「LINE公式ブログ」「LINE有料公式アカウント」は、かつてCAやGREEも実施したタレント・アーティストを取り込んでの、情報コンテンツ強化の方向性と思われる。

エンターテインメント・プラットフォームの全体の方向性としては、収益頭の「ゲーム」と同等レベルのパワーで「マンガ」「ミュージック」にも攻めていくと思われ、本気度合いを感じるところ。
他のコンテンツにも拡大していくと言っていたので、おそらく「ムービー(映画やテレビコンテンツ)」や様々な「情報コンテンツ」なども企画中で、その他「ニュース」のてこ入れも行われることだろう。

エンターテインメント・プラットフォームは、あくまでも「コミュニケーション」が中心である、というコンセプトに全くブレがないのがスゴい。



3.ビジネス・プラットフォーム
発表では「ビジネス・プラットフォーム」という言葉は使われていない。
だが、ユーザーの同意の下、企業の持つ既存のデータベースや、自社システムとユーザーのLINEアカウントを連携させるパートナープログラム
「LINEビジネスコネクト」が向かう方向性は、まさにこれだと考えている。

現状でこそ、株価などの情報確認や車の停車時間表示など、アドホックでのユーザーコミュニケーションツールの域を出ないが、今後は企業のCRMを支援するプログラムにしていくとの話。
つまり、アドホックなツール導入から、企業のマーケティングプロセスを理解した上で、企業と一緒にマーケティングプロセス改善の提案を行っていくのだと予測している。
何故なら、「広告ビジネス」だけだと、どうしても企業側とユーザー側の利害が相反するものになりやすいが、「仕組みの提供」とすることで、クライアント企業と共通の目的に向かい継続的に取り組みながら収益を得ることができるから。

とは言え、現状では、企業のマーケティングプロセスを理解し提案できるノウハウはないだろうから、今後初期導入してくれた企業の担当者と一緒に、LINE社内の人材を育てながら、じっくりとノウハウを積み上げていくのだろう。
おそらく、現状のメールを駆使したダイレクトマーケティングの提案会社のような方向性を目指しているのではないか。まだ漠然とだとは思うが。

これが上手くいくかは、LINE社が自社内でノウハウを蓄積する方向を目指すかどうかに尽きる。
企業向けの提案でもプラットフォーム志向で売り切りビジネスや月額課金ツール売りビジネスを目指すのなら、上手くいかない可能性が高いと踏んでいる。

(企業側にとってのリスクについて)
まあメールと違って、「LINEビジネスコネクト」は一企業のプラットフォームであるので、クライアント企業からすると、あんまり自社のマーケティングプロセスに深入りさせるのは危険だと思うが、Facebookと比較するとLINE社は広告など企業向けの提案サービスをユーザーの反応を見ながら抑制的にコントロールしているので、Facebookほどのプラットフォームとしてのリスクは無いのではないか。

また、ユーザーを大規模に抱える企業のビジネスは、広告収益に頼ると先細りしやすい(そして先細りするほど営業が暴走しやすい=企業とユーザーの両方にマイナスとなる)が、LINE社の場合はコンテンツ収益やゲーム課金など、別に大きな収益の柱があり体力があるので、企業にとってユーザーにとってもメリットとなる三者がハッピーな取り組みをじっくり行うことができるのが強みと言える。



LINE社の公式まとめはこちら→
LINE、事業戦略発表イベント「LINE CONFERENCE TOKYO 2014」を開催

2014-04-07-06-20-06

スマホアプリのLINE Qは、普段はまず関わることがない10代の小中高生への質問を行えるツールとして重宝している。
体感的には、回答者の7割は小中高生の印象である。
そこで、たまたま政治や社会問題カテゴリの質問や回答を眺めていると、質問・回答者の間での「平和」に関する意見のズレが気になった。

という訳で気になった私は、1,000ポイントとMAX付与で、
「平和」とは何か(「平和」の定義をどう考えているか)と質問してみたところ、なんと200件の回答が集まった。固い質問にも関わらず、ほとんどの方が真面目に回答してくれた。


で、内容をまとめてみたところ、大体下記7パターンとなった。
なお、下記7パターンは回答文を踏まえた私自身の言葉による解釈である。
また、回答は選択肢ではなく自由回答であって、数値は全て手作業で集計した。

⚫︎回答結果まとめ(ユニーク181件の分類分け)
1.皆が健康で文化的な最低限度の生活を営んでいること【103件・57.0%】
(皆が笑顔で幸せな当たり前の日常を営んでいること)
2.上記1かつ皆が道徳的であること【23件・12.7%】

3.争いがないこと or 争いと争いの間【24件・13.3%】

4.平和は個人個人が決めることであって、共通のものではない【7件・3.7%】
5.平和は幻想であって存在しない【13件・7.2%】
6.人間がいなくなること【6件・3.3%】

7.よく分からない or 質問への回答ではない【5件・2.8%】


⚫︎所感
LINE Qで「平和」とは何かと質問したところ、特に「1」と「2」が多く、
「幸せ」「笑顔」「日常」という言葉が目立っており、「1」と「2」と合わせて69.7%と、約7割の人たちにとって重要なキーワードであることが伺える。
また、「1」「2」の中で、「幸せ」「笑顔」「日常」だけてなく、「道徳性」を求める回答は、約1/5と18.2%を占めた。

次に多いのは「3」で13.3%
「1」の話は別枠で考えていると思われ、主に戦争との対比での考え方である。
こちらは10代ではなく社会人の回答者が多そうであった。私自身は「3」の定義を自身の考えとしている。

「4」の個人視点の人が3.7%と、一定数いるのは予想通りだったが、
「5」7.2%と「6」3.3%という身も蓋もない考えの人が、合わせて10.5%もいたのは意外だった。


⚫︎まとめ・気付かされたこと
LINE Qを使う日本人の10代は、「平和」について、主に下記2点のどちらかと考えている人が多い、という結論。
日本人が長らく戦争と縁がなかったからか、戦争との対比ではない「1」と「2」の回答が多かったという興味深い結果となった。
まぁちゃんとした調査ではないので、仮説に過ぎない訳ではあるが。

1.皆が健康で文化的な最低限度の生活を営んでいること
(皆が笑顔で幸せな当たり前の日常を営んでいること)


2.上記1かつ皆が道徳的であること

私の考えと異なることもあり、LINE Qの小中高生の人たちは、一体どういう考えなんだろうと悩んでいたのだが、LINE Qのおかげで、大きく2つに言語化してまとめることができたのは良かったと思っている。


⚫︎その他、LINE Qへの感想
小中高生へ直接質問できるツールという意味で、LINE Qにはとても大きな可能性を感じるようになった。
普通は最も意見を聞くことが難しい小中高生に簡単に質問できることで、10代の色々なサービスの利用状況の簡易的な仮説探索や、10代の考えを直接聞けるのが、素晴らしい。
ビジネスユーザーも、このツールを活用すべきではないだろうか。


(LINE Q関連記事)
スマホ向けQ&Aアプリ「LINE Q」のLINEユーザー同士のコミュニケーションサービス、だけではない真の狙いとは?

LINE Qの記事を書いたら、たまたまlivedoor blogニュースに掲載されて、過去4年分以上のアクセスが来た

奨学金問題について、前提や制約条件を整理した上で、問題点や改善案を考えてみた。
改善案の考えに関しては、あくまでも未来の話であって現在の滞納者を救う案ではない。
また、返済不要の奨学金を得られるほどには優秀でない「返済必須の奨学金を利用する一般の人」を想定している。

なお、奨学金制度そのものは、多くの若者に機会を与えてきた仕組みだと思っている。大学生の半分は利用しており、私もその一人だった。
だが、現状で約7%もの若者が信用情報に傷が付く3ヶ月以上の滞納者となり、人生が早くも詰んでいる状況を看過してよいとは思わない。自己責任と言えばそれまでであるが、通常奨学金を受ける判断は親の影響が強いだろうし、本人が決めたとしても「未成年の高校生」の判断の甘さをもって、早々に人生が詰むリスクを負わせていいものだろうか。

よって、奨学金制度の最大の問題は、判断の甘さを誘発する「借り手側の理解の欠如と選択肢への無知」にあると考えている。


●前提
・人は、お金や能力や機会において平等ではない。完全に平等にはなれないし、平等にできない。
→お金に恵まれず、能力にも恵まれなかった人は、恵まれた人ほどの機会は得られない。

・大卒でないと職の選択肢は少なく、収入を多く得られる可能性は低い。
→非大卒は生活が苦しくなる可能性が高く、かつその認識が親の世代に浸透している。

・人にとって、「食うためだけの仕事」と「生きるための仕事」は別である。
そして皆、人間らしく「生きるための仕事」をしたいと考えている。
→よく言われる「職を選ばなければ〜」というのは、一生我慢して生きろ、と同義で残酷な言葉)

・大卒後に職が得られず奨学金が払えなくなると、3ヶ月滞納で信用情報にも傷が付き、割と人生が詰む。
→奨学金の3ヶ月以上滞納者率は、今のところ約7%(約20万人)程度で、若者の失業率と同じくらい。

※ 参照: 平成22年奨学金返還回収状況について(PDFファイル)
(7ページ目の「6. 3ヶ月以上延滞債権の状況」)


●制約条件
・大卒者全て満たせるほどの職は日本には無いし、今後も無い。
・今後は、年を経ても給与が上がるとは限らないし、ずっと貰えるとも限らない。

※ 参照: データえっせい - 22歳の危機(大卒無業者数の推移)
→2011年大卒者約55万人のうち、無業者は約12万人の21.8%。
これはあくまでも全体の数値なので、中堅校や下位校の大卒者であれば、無業者率はさらに高いだろう。


●問題点の整理
①大体が、親が決めて借金をして、将来子ども本人が払う形になっており、リスク想定が甘い無自覚な借金となっている。つまり、借り手側の理解度が非常に低い。
→そして、大抵の場合、「恵まれていない」人ほど理解度は低いと想定され、貧困と同じで自己責任では片付けられないと考える。

②大卒→正規社員ルート以外の選択肢を知らないため、親は子どもの可能性を信じて、リスクが大きくてもこのルートに賭けてしまう。
→子どもの将来の生活がずっと苦しいと思われる高卒ルートより、まだ可能性がある大卒ルートに賭けたいと考えてしまう。

③親が返しきれないほどの奨学金を借りてしまっている場合がある。
→例えば、利息込みで480万円だと月2万円×20年となり、一般の家計的には結構キツいレベル。ましてや、若者に負わせる借金の額としては、借りるべきではないという意味で正気の沙汰とは思えない。


●身も蓋もない結論
無理な借金はすべきではない(させるべきではない) = 無理な進学はしない
つまり、お金に恵まれず能力にも恵まれず、高校までに学力で実績を出せていなければ、大卒ルート以外を有力な選択肢として検討した方がよい。
(大卒であっても、下位校であれば就職できない可能性はかなり高いと思われるので、当然リスクは高い)


●借り手側に無理な借金をさせない案について(行政レベル)
①借り手側の理解度向上
→返済が必要な「奨学金」は、「大学ローン」などと借金と分かる名称にする。
→リスクについての説明の機会と理解を高める機会を設ける。
(高校内や市区町村の相談機関や金融機関、CMやニュース特集といった告知など)
→市区町村による一部補助制度や民間企業による返済不要の奨学金制度もあるので、そういった個別の制度の認知を高める。
(高校内や市区町村の相談機関、ニュース特集といった告知など)

※ 参照: 朝日奨学金(朝日新聞社)毎日育英会(毎日新聞社)
→例えば、新聞社が新聞配達業務を条件に「返済不要の奨学金制度」を用意していたりする。
(学費・生活費稼ぎのバイトだけではなかったとは知らなかった)

②子どもの将来の選択肢への無知
→大卒ルート以外の選択肢についての説明の機会と理解を高める機会を設ける。
(高校内や市区町村の相談機関、CMやニュース特集といった告知、ドラマ化とか? など)
→大卒ルート以外の就職ルートやキャリアルートを整備する。
→大卒ルート以外の就職の機会を提供+認知を高める。
(既に実施例は多いが、高3に対する早い段階での高卒向け就職説明会など)
→大卒ルート以外のキャリアプラン例の提示+認知を高める
(高3の段階では遅くて、中学の段階で手に職が付くような高校を選ぶべきかもしれない)

③親が返せないほどの奨学金の制限
→親が返せないほどの借金をする必要がある場合は、そもそも奨学金を認めてはいけないのではないか。
(現状では貸す側に審査能力がないのが問題だが、消費者金融のノウハウとか活かせないのだろうか、と素人的に思ったり)



(余談)
現在の滞納者の人たちに対しては、一体どうするのがいいのか、私の中で答えはまだ出ていない。完全に失業問題になっているし。自助努力のサポートでどうにかするにしても、仕事がない。
何かしらのセーフティーネットがあった方がいいと思うのだが……。

「デジタル教科書」話がまた一部で盛り上がっているけど、デジタルへ向かうことを否定する人はあまりいないと思うが、そもそもの目的とかメリットとかってなんだっけなー、と思いながら、つらつらとツイートしたものをまとめてみる。

デジタル教科書


デジタル教科書にサンセイのハンタイなのだ - 中村 伊知哉
"実証は必要だが、実証の成果を「待って」いたら100年たっても導入はできない。社会全般も、子どもの暮らしも、海外の教育もみなITを利用する中で、導入に反対するかたには「導入しないメリット」を実証する責任が生じていると思う"


まず「教育の情報化」において重要なことは、「デジタル教科書」というツールではなく、「目的設定」「制約条件の確認」「目標効果の決定」「現実的かつ効果的な手法の検討」あたりであって、前提部分を理解しなければ始まらないだろう。


●「教育の情報化ビジョン」の目的とは
と言う訳で、文科省の「教育の情報化ビジョン」を読むと主な目的設定は、

1.情報活用能力の育成
2.情報通信技術を効果的に活用した分かりやすい授業の実現など
3.校務の情報化による校務負担の軽減

の3つ。

「デジタル教科書」はこのうち「2」に該当し、さらに大きく「指導者用」「学習者用」がある。「1」は教科書とは別の話と言うか新しい教育項目で、「3」は業務のシステム化の話。

で、「学習者用デジタル教科書」の目的設定は、「子どもたち一人一人の学習ニーズに柔軟に対応でき、学習履歴 の把握・共有等を可能とすること」とある。
印象としては、「デジタル教科書」で「今できていないことをやろうとしていて、理想がすごく高い」ように思える。
と言うよりは、曖昧な「デジタル教科書」の理想のイメージが先行しちゃっている感じに見えるかな。


●新しい運用のシステムを導入するのに必要なこと
今できていないことをやろうとして、「デジタル教科書」という「新しい運用」を前提としたシステムを導入しようとするのは、よほど現場サイドが混乱しないような導入方法と運用方法を上手い形で計画・準備しないと、非常に難しいと思う。
理想に現場サイドの運用が付いていけないパターンはよくある話だから。
要は、問題は「導入するしない」ではなく、「どのように導入するか(どこまで導入するか)」だ。

「どのように導入するか」については、本番環境に近い状態で検証して問題点を洗い出し、「デジタル教科書」前提の教育カリキュラムを構築する必要があると考える。
つまり、「デジタル教科書」導入の課題とは、ハードでもソフトでもなく、まず「運用の構築」なのである。


その運用を踏まえた「本当に必要な実証実験」については、この記事に分かりやすく書かれている。

デジタル教科書導入に必要な実証実験 - 辻 元
“本当に必要な実証実験とは、生徒用デジタル教科書の試作品を用いた、通年の授業案を作り、同じカリキュラムを紙の教科書を用いた対照群との成績の比較をする対照実験だ”


●将来的な目的ではなく、目先の目的設定をどうするか
「子どもたち一人一人の学習ニーズに柔軟に対応でき、学習履歴 の把握・共有等を可能とすること」が将来的な目的とはいえ、一足飛びにその大きな目的を前提としての「運用の構築」は無理がある。現状では、ノウハウも技術も何もかもが無さ過ぎるからだ。

よって、段階を踏んで、将来的な目的に近付いていくことが、現実的な進め方となるだろう。
では、「教育の情報化ビジョン」にある将来的な目的ではなく、目先の目的設定をどうするか。今、詰めが甘いのは、この「目先の目的設定」にあるのではないかと思う。


●「デジタル教科書」推進で本来説得すべき相手とは誰か
「デジタル教科書」は、向き不向きな内容やメリットデメリットは、海外の事例や国内の実験である程度知見は貯まってきていると思うのだが、結局現状ではコストが掛かり過ぎることが、最大の問題なんだろう。コスト制約が大きい以上、ここで「目的設定」「目標効果」が曖昧だと、間違いなく上手くいかない。

「デジタル教科書」の推進は、導入機器とか導入手法とか以前に、「目先の目的設定」「目指すべき効果(メリット)」を明確化して、ある程度合意を得ないと話は一向に進まないんじゃないかね。
子どもの親なら誰でも分かるメリットとは何ですか?」と。
理解が必要な相手は、子どもの親なんだから。

特に、子どもの親側に負担を求めるのなら、それこそ負担するに見合うだけのデジタル教科書のメリットを子どもの親に提示し理解を得なければ、何も進められないと思う。メリットについてはなんとなーく曖昧にイメージはしていても、明確に言語化できている人はほとんどいないんじゃないかな。


●そもそも子どもの親って、「デジタル教科書」を必要としているのか
下記の韓国の事例では、「デジタル教科書」による「学力向上効果」はあまり見られない、という結果になっており、解決すべき課題も多い。
結局、「莫大なコストが掛かる」にも関わらず、子どもの親から「大してニーズはなく」、今のところ「学力向上効果もあまり見られない」のが現状だ。

韓国の情報教育の現況と課題(27〜38ページ)(PDFファイル)
→5. デジタル教科書開発とモデル学校の現況(33〜35ページ)に、実証実験の結果についての記載がある。


●私の結論
という風に、文科省の「教育の情報化ビジョン」の目的設定から、「デジタル教科書」導入での検討課題、段階的な導入の進め方、目先の目的設定、そもそも誰が必要としているのか、と遡って考えたり調べたりしてみると、現状で「デジタル教科書」を推進すべき理由が無くなってしまった。あれ?
推進するためには、○○がまず必要、という結論を出すつもりだったのだが……。長いだけで、流れが微妙な記事になってしまったではないか。


なので、結論としては、「デジタル教科書」については、現状は「推進段階」ではなく、何に使えそうかを「模索する段階」でしかない、のだと考える。

つまり、「模索するための長期的な実証実験」には賛成だが、「全面的な導入」には現状では反対。
コストが掛かり過ぎる上に、長期的な実証実験を踏まえたメリットが全く見えず、今のところ誰も必要としていない、と三拍子揃っちゃっているから。

一言で言うならば、「子どもの親なら誰でも分かる何万円も負担するだけのメリットとは何ですか?」に答えられるようになるまでは、「全面的な導入」には反対。






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